在宅介護しながらウィーンへ行くブログ~猫とビターチョコレート~
独身のアラフォーが家族を在宅介護、やりくりしながらウィーン旅行を目指します
はんぶんこ
3、4才のふたごがベンチに座って電車を待っていた。
じっとしていられないお年頃。
騒ぎたくてウズウズしていると母親が
「いいもの、みいつけた」
と、お菓子の箱をとりだした。
コーヒー豆の形をした、豆粒みたいなチョコレート菓子。
子供たちの目が輝いた。
「じゅんくんたべるの!」
ひとりの子が手をのばしてひったくった。
「だーめ!」
もうひとりが悲愴な顔で手をのばす。
「みいちゃんもたべるう!」
よけいに騒がしくなった。
母親は怖い声で
「とりあいしないの!」
と子供を叱った。
「じゅん、勝手にとったらダメでしょう?
はんぶんこ。
ケンカはぜったいしないの。
ほら、みいちゃんにあげて」
じゅんくんはすでに箱をあけて、豆粒みたいなチョコをとりだしていた。
自分が食べようとしていたのだけど、母親にいわれたみいちゃんに渡した。
それからひとつ自分が食べた。
「いっこずつね」
じゅんくんは、箱の中のチョコレートを公平に分けた。
いっこ、みいちゃん。
いっこ、じゅんくん。
いっこ、みいちゃん。
いっこ、じゅんくん。
それからしばらく考えて
「ママにもあげる」
とひとつ渡した。
「ありがとう」
と母親がほほえんだ。
そのとき、電車がやってきた。
私は電車に乗りながら
「領土問題もこんなふうに解決できちゃったらいいのに」
と思った。
「ウソをついてはいけません」
「みんなと仲良くしなさい」
「お友達の気持ちを考えなさい」
「ひとを傷つけてはいけません」
「ひとの悪口を言ってはいけません」
「正しいことをしなさい」
「ごめんなさい、って言いなさい」
「もうゆるしてあげなさい」
大人はいろいろと子供を叱るけど、たいてい、大人がいちばんできてない気がする。
じっとしていられないお年頃。
騒ぎたくてウズウズしていると母親が
「いいもの、みいつけた」
と、お菓子の箱をとりだした。
コーヒー豆の形をした、豆粒みたいなチョコレート菓子。
子供たちの目が輝いた。
「じゅんくんたべるの!」
ひとりの子が手をのばしてひったくった。
「だーめ!」
もうひとりが悲愴な顔で手をのばす。
「みいちゃんもたべるう!」
よけいに騒がしくなった。
母親は怖い声で
「とりあいしないの!」
と子供を叱った。
「じゅん、勝手にとったらダメでしょう?
はんぶんこ。
ケンカはぜったいしないの。
ほら、みいちゃんにあげて」
じゅんくんはすでに箱をあけて、豆粒みたいなチョコをとりだしていた。
自分が食べようとしていたのだけど、母親にいわれたみいちゃんに渡した。
それからひとつ自分が食べた。
「いっこずつね」
じゅんくんは、箱の中のチョコレートを公平に分けた。
いっこ、みいちゃん。
いっこ、じゅんくん。
いっこ、みいちゃん。
いっこ、じゅんくん。
それからしばらく考えて
「ママにもあげる」
とひとつ渡した。
「ありがとう」
と母親がほほえんだ。
そのとき、電車がやってきた。
私は電車に乗りながら
「領土問題もこんなふうに解決できちゃったらいいのに」
と思った。
「ウソをついてはいけません」
「みんなと仲良くしなさい」
「お友達の気持ちを考えなさい」
「ひとを傷つけてはいけません」
「ひとの悪口を言ってはいけません」
「正しいことをしなさい」
「ごめんなさい、って言いなさい」
「もうゆるしてあげなさい」
大人はいろいろと子供を叱るけど、たいてい、大人がいちばんできてない気がする。
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あなたみたいに
沈む月
火曜の夜の帰り道。
車で走っていたときのこと。
いつもどおり、まっすぐ伸びた道を走っていくと、坂のてっぺんに、いつもと違うものが見えた。
巨大で黄色い、月。
「ありえない!」
思わず声がでるほどの。
それは異様な月だった。
マンガでしか見たことのない大きさ。
毒々しいほど濃い黄色。
まるで宇宙からおちてきたゆで卵の黄身だ。
月は西のほうの山に沈んでいくところだった。
まわりの雲をぼんやりとオレンジの光芒で染めていた。
夕焼けとは違う。
なにかおそろしいような、予兆のような、どきどきするような眺めだった。
この世はふしぎで満ちている。
気づいてないことがいっぱいある。
見逃してること、いっぱいあるんだ。
車で走っていたときのこと。
いつもどおり、まっすぐ伸びた道を走っていくと、坂のてっぺんに、いつもと違うものが見えた。
巨大で黄色い、月。
「ありえない!」
思わず声がでるほどの。
それは異様な月だった。
マンガでしか見たことのない大きさ。
毒々しいほど濃い黄色。
まるで宇宙からおちてきたゆで卵の黄身だ。
月は西のほうの山に沈んでいくところだった。
まわりの雲をぼんやりとオレンジの光芒で染めていた。
夕焼けとは違う。
なにかおそろしいような、予兆のような、どきどきするような眺めだった。
この世はふしぎで満ちている。
気づいてないことがいっぱいある。
見逃してること、いっぱいあるんだ。
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