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在宅介護しながらウィーンへ行くブログ~猫とビターチョコレート~

独身のアラフォーが家族を在宅介護、やりくりしながらウィーン旅行を目指します
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羽生結弦選手に感動した

今日も我が家はレイニーだった。
ズボンを脱がせ、着替えをしている途中で母がいった。
 「今からね、羽生結弦がすべるの」
母はフィギュアスケートが大好きだ。
トイレに入る直前まで、中国杯の男子フリーをみていた。
 「羽生君ね、さっき外国人選手とぶつかってね。
  大ケガしはったの。
  棄権するかと思ったけど今から滑るんだって!」
えっ、そうなの!?
 「だからね、見てあげなくっちゃ!」

大急ぎでトイレを出ると、ちょうど羽生選手の演技が始まるところだった。
・・・びっくりした。

頭を包帯でぐるぐる巻きにしている。
アゴの絆創膏は血で染まっている。
繊細な美少年が見る影もない。
幽鬼のように青く、はりつめた顔で一点を睨んでいる。
おそろしいことが始まる予感がした。

音楽がはじまる。
『オペラ座の怪人』だ。
おどろおどろしいファントムの歌が血まみれの修羅場に沿う。

最初のジャンプ。
転倒。
次のジャンプ。
転倒。
いったい何度、転んだのだろう。
転んでも転んでも立ち上がり、またジャンプに挑む。

フリーの演技は長い。
後半に入ってもまだ転倒しつづけた。
私はフィギュアのことはぜんぜん知らない。
どれが3回転だか4回転だかわからない。
それでも鬼気迫る勢いは感じた。
渾身の力をこめ、全霊を注ぎ、命を懸けて滑っているのを感じた。

そして、何度も何度も転びながらも、
何度かジャンプに成功した。
くるくるとまわっていた。
頭を打っているのにどうしてあんなに回れるんだろう。
まっすぐ立つこともできない人がどうしてあんなふうに滑ることができるのだろう。
一流のひとは、心の力で、こんなにもすごいことができるんだ。
畏敬の念を覚える演技だった。

長い長い4分半の後。
曲が止まった。
点数が出た。
その時点での1位だった。
羽生選手が顔を覆って泣き出した。
解説のひとも泣いていた。
まわりもいっぱい泣いていたと思う。
まるでスポ根マンガみたいな場面。
なんかすごいものを見たと思った。

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気がつけば、私も母も泣いていた。
「すごかったね」
「がんばったね」
と、口ぐちに喋って。
大変なことに気がついた。

母、ズボンを履くのを忘れてた!

「羽生君の演技が始まる、トイレに入ってる場合じゃない」
ってことになって、慌てて出てきちゃったから。
なんと紙オムツ姿のまま羽生くんを見ていた。
紙オムツまるだして感動して泣いてた。
毛布はかぶってたけど。
それから慌ててズボンを履いて。
・・・今夜も15分おきにオムツ交換やってます。
寝れない。
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お宝?ガラクタ?

先日、叔父の引っ越しを手伝ったときに、えらく古そうなもの見つけた。
廃品回収業者に
「これはちょっと・・・」
と突き返されたという代物。



ぼろぼろのケースの中身は、ミシンだ。
かなり古い手回しミシン。

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SINGER 手回しミシン
(SINGER社製)

かなりカッコイイ形をしている。
残念ながら塗装がハゲてるけど。
ハンドルを回すと、ちゃんと針が上下に動く。
使えるんだろうか?



針には糸が通ったままになっていた。
・・・死んだおばあちゃんが通した糸なのかな。
と、しみじみ話したら、母が
 「おばあちゃんが使ってるの見たことないよ」
と言う。
もしかして、ひいばあちゃんのか?



型番を調べると、製造年はなんと1911年!
100年以上昔のものだった・・・。
ちなみにアメリカ産。



ほんというと、アンティークとして売れないかな、と考えてた。
ヤフオクにかけるつもりだった。
だけど保存状態が悪すぎて、とても売り物にならない。
なにしろ触れるだけでボロボロと崩れてくる有様・・・。
どうしようかなあこれ。

売れない。
といって、捨てられない。
飾る場所もない。
あとは・・・使うか?
使えるんかコレ?


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どうしても、どうしても・・・!

病気で倒れてから、母には妙な癖ができた。
癖というかこだわりというか。
「気になるものを見つけたら、我慢できない」
というもの。

大抵すごくつまらない、どうでもいいものばかり。
たとえば家族で車で出かけ、
 「次の信号を左だ」
 「いや右だよ」
と必死で道を探しているときに。
母が突然、
 「ねえ見て!見てあれ!」
と大声をあげる。指をさす。
 「『七転び八起き』って店があったよ!
  ねえ、ねえってば!
  七転び八起きだって!
  おもしろいね!」

どうでもいいし、おもしろくないし、今それどころじゃない。
それが母にはわからない。
空気を読むことができない。
気になるものを見つけたら、それを人に教えなければ気が済まない。
 「どうしても、どうしても、みんなに言いたかったの!」
まるで小さな子供みたいに。

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だから今日、みんなでランチを食べてるときに、母が
 「ねえ!見てあれ!」
といいだしても、またか、としか思わなかった。
 「あれ見て!」
うんうん。
 「抽選会やってるよ!」
はいはい。
 「ガラガラって音がするね!」
うんうん。
 「あんた抽選やってきてよ!」
はいはい。
ガラガラが気になって気になって。
母はもう食事どころじゃなかった。

商店街のイベントだったので、カフェのお会計で抽選券を2枚もらうことができた。
・・・よかったね、これでガラガラ2回まわせるよ。
なのに母は
 「でもお母さんはクジ運ないから、あんたが回しておいで」
という。
私が小さかったときみたいに、譲ってくれるつもりなのだろう。
私はいいよ。
お母さんが回してよ。
 「うん!」

母ははりきって抽選に挑んだ。
こういう時ってだいたい、はずれる。
誰ひとり期待していなかった。

が!
神は存在した!

ガラガラー。
 「おめでとうございます!4等でーす」
ガラガラー。
 「おめでとうございます!3等でーす」

見事2回とも当てた!
賞品の果物セットとブランケットを、
母はものすごく嬉しそうに大事そうに胸に抱えて帰った。
幸せそうでよかった・・・。


(薄いブランケットなのであじゃり様が使っています)


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初めましての方へ

母:高次脳機能障害、要介護5
妹:重度重複障害者
父:天然ボケ
猫:2匹
こんな家での暮らしを綴っています。
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